「ユリちゃんはどうしたんだ?」
静まり返ったマンションのリビングで電気も点けずに翔造との話は続いていた。
「中学の時に別れてるよ。」
「なんで!?あんなお家柄のいい子だったのに別れちゃったんだ!?お互いバスケは学生時代のお遊びで、将来は互いにそれぞれちゃんと家業を継ぐって話してて」
「今はさっき紹介した白石未茉さんと付き合ってるんだ。彼女も明徳で東京優勝してて今回Uー18の日本代表にも選ばれて…」
「お前には常々バスケはお遊びだと言ったはずだ!!!!!」
「…」
「お前にはお前の似合った人がいる。今すぐ別れるんだ。」
「嫌です。」
「翔真ぁぁ!!!」
ーーーダン!!!
体中の怒りをぶつけるようにテーブルを思いっきり拳で叩きつけた。
「なんで反抗するんだ!!!お前らしくないじゃないか!!!!会社の名前に傷をつけるつもりかぁ!!!!」
「…語弊があります。僕と彼女の交際が会社の名を傷つけるとは思いません。」
「口答えをするな!!一体どうしちゃったんだ!!昔からお前は素直に私の言うこと聞いて」
「今度は僕の話だけでも聞いてくれませんか?」
「目を覚ませ!!!お前は将来この会社をしょって立つ人間だ!」
「…分かっています。」
「分かってない!!!!だからあんな小娘と公衆の面前であんな恥ずかしいことしたんだろ!!!」
「…知ってたんですか?」
「会社にお宅のご子息じゃないですか?と幾つもの取引先から連絡があった。」
はぁっっと振り絞るようなため息をついて頭を抱えてソファーに腰かけた翔造を見て、だから突然帰ってきたのか…と納得した。
「とにかく別れなさい。」
「無理です。」
「これは命令だ。お前の答えなどない。」


