せーのっ!

 「みずきくーん♡」

 校門に入った途端、黄色い歓声が止まらない。
 瑞希と呼ばれた人物は、彼女達に少し憂鬱そうに視線を返す。


 こう言った反応には流石に慣れているが、今日は気分が悪く、ちょっときつい。




 はぁ……と気怠げにため息をこぼし、視線を落とす。不意に風が吹き、楽しそうに髪を揺らした。

 前髪が目にかかり払おうと前を見ると、少し先で
何やら人だかりができていた。



「うわ…やば。めっちゃ可愛い」
「あんな子いたっけ?絶対忘れないと思うんだけど。」
「っつーか、あれ、ロールスロイスの最新車じゃね!!かっけぇ…」
「あの制服って…」



 聞こえる限りではめっちゃお金持ちの美少女、と言ったところだろう。
 …それにしてもロールスロイスってすぐわかるものなのだろうか。



 まあ、自分には関係ない話だと思いさっさと教室に向かう。


 











 「……見つけた。」

冬の精霊かと疑うくらい透き通る肌に輝くような銀髪。蜂蜜色と空を切り取ったような綺麗な青色のオッドアイ。その目は運命の人を見つけたとでもいうように輝き、彼を捉えて離さない。






 叶わないことだけど、気持ちだけは伝えたい。






 そして彼を追いかけようと走りだした











 ーーーが、

 「はい、すとーーーーーーーっぷ!」

 急に襟を引っ張られ、ぐえっと淑女のかけらもない声を出す。

 「どこ行くのよ。職員室はこっちでしょ。」

振り返れば、ポニーテールの少女が呆れた顔でため息をつく。

 「転校初めてじゃないんだから……」

 と、そのままズルズルと引きずられ









 ーーるわけには行かない。


 ぐっと踏ん張るが、力虚しく負けてしまう。


 「柔道黒帯の私に勝てるとでも?」

嘲笑うかのようにこちらを見てくる。

 むぅ、と口を尖らせ反抗するがそのまま職員室まで連行された。