思いっきり引き寄せられた体が、しゃがみ込んだヒデに包まれる。
ふわり。
温かくて力強い腕の中。
「結依から言わせたかったのに」
「ヒ、デ……?」
抱き締められた体が熱を帯びる。
お互いの胸の鼓動が共鳴し、より一層激しさを増していく。
ヒデに触れたい……。
手を繋いでいないもう一方の腕を伸ばして背中に回した。
微かに反応するヒデ。
何でだろう。
ドキドキしているのにすごく安心する。
いつまでもこうしていたい。
伝わる微熱も振動する胸の鼓動も、息遣いの一つでさえ、すべてが愛しい。
ざわめく木々は未だ音を立てて揺れ動いているけれど、私の心は激しく音を立てながらもなぜか穏やかな気持ちになれた。
誰もいない深夜の道端。
しゃがみ込んだまま長い時間抱き合っていた。
今まで触れたくても触れられなかった時間を埋めるかのように。
お互いの温もりを確かめるかのように。
本当はもっと早くヒデを感じたかったのかもしれない。
素直になれなかった。
屁理屈ばかり並べた。
傷つくことを恐れた。
恋に臆病になるただの弱虫だった……。
少し触れるだけでもこんなにも愛しくなるほど好きなのに、バカだね。
今度こそ伝えなきゃ。
そう思って口を開こうとしたら、後ろから足音が聞こえてきた。