ウィルが旅立って3日目。そろそろ帰還されるはずが、何の連絡もありません。何かあったのか、やはり私との結婚が嫌になってしまったのか、私は不安でいっぱいでした。

 落ち着きのない私を見かねて、どこの準備に行っても「ここはいいから少し休んで」と言われてしまいます。皆さんに気を遣わせてしまって、申し訳ないです……。

 今もジェームズお爺様とお庭のお手入れをしようとしたのですが、元気のない私を妖精さんもジェームズお爺様も心配してしくださって、部屋に戻るよう言われてしまいました。
 仕方なく自室に戻ろうとしていた、その時。


「なんですってぇ!ローズ様に脅迫状?!」

 アンナの叫び声が聞こえました。ここは使用人の方のダイニングルーム。一休みしているところだったのかもしれませんね。それにしても、私に脅迫状?どういうことかしらとドアをノックしようとしたところで、ロバートの声も聞こえました。

「そうです。婚約されてから何通も。私の方が相応しいだとか、伯爵令嬢じゃもったいないうちの娘を!というような身の程知らずのものばかりです。もはや慣れてきましたけどね。しかも大旦那様がかなりお怒りで。国王も巻き込んで貴族がどんどん没落しそうな勢いで懲らしめられてますよ。」
「当たり前です!あんなに可憐で美しく、教養もあって勤勉で性格もよくって、素晴らしいご令嬢などいませんわ!!」
「アンナの言う通りです。ですが、くれぐれもローズ様のお耳に入らぬよう……」

 私は二人の会話に衝撃を受け、ドアをノックできずにその場を離れました。
 何通も。たくさんの方が私とウィルの婚約を「相応しくない」と思っているそうです。そうですよね、特に秀でたもののない私が、あんなに完璧な公爵様と結婚だなんて。身の程知らずですね。

 お義父様は優しいから、お怒りになってくださっているのかもしれないけれど、ただの嫁のためにそこまでの権力をふるうのは本意ではないはず。今までの貴族同士の関係を悪くさせてしまったかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちになります。

 ウィルに会いたい……

 まだ一度も「好きだ」とか「愛している」という私を想う言葉は言っていただいていません。キスもしたけれど、優しいから。責任感で結婚してくれるような方だから、私がリラックスできるように気遣っていたのかもしれません。

 だけど。私はとっくに、ずっと前から、ウィルのことが──。