白のドレスに合うイヤリングも貸していただき、髪は頭の上に上品にまとめられ、私は無事婚約式にふさわしい姿に変身することができました。
 やっぱりお花がないと落ち着かないので、髪に白の小さなお花を飾っています。

 そして、公爵領の一角にある大聖堂にやってきました。ハレック王国の国民は必ず結婚前に、こうした大聖堂で婚約式を挙げます。
 それは、貴族も平民も関係なく、魔法石の有無も関係なく、そして神官の承認の有無も関係ありません。互いに未来を誓い合うことが重要視されているのです。
 貴族に関しては、婚約式で互いの瞳の色や髪色の魔法石を贈りあうのが流行っているそうですが。

 さすが公爵領といった荘厳な大聖堂には、色とりどりのステンドグラスがあり、そこから入る日の光がとても美しく、神々しい雰囲気です。
 既に、前公爵様とカタリナ様、両親とお兄様が待ち構えています。そして、私と対のような白のタキシードに身を包むウィルも。

 ウィルの濃紺の髪に白のタキシードはよく似合っていて、長身の彼が着ると物語の挿絵から飛び出してきた王子様のような装いになりました。荘厳な大聖堂と一体化したような、神々しい姿を見て、私はこの景色を一枚絵にして壁に飾りたい、などと妄想を繰り広げてしまいました。

 ウィルは、私を見て驚いた顔をしたかと思うと、丘の上で見たあの甘い微笑みをくれました。

「…綺麗だ…。」
「ありがとう、ございます。」

 何が何だかわからず、混乱しながらも、憧れのウィルからの求婚に喜びを感じていたのは本当で。
 もしこの後婚約破棄されるのだとしても、彼の笑みをこの目に映せたことは、とても幸せなことだと感じていました。今、この瞬間の幸せだけで、今後どんなことも乗り越えていける気がしていました。