高校1年生から付き合っていた彼氏が大好きだった。
まだ16年しか生きていないし、出会う人間も世界も限られていたのに結婚するならこの人だろうと、そう思っていた。
彼は素直で優しかった。滅多に怒ることもないし、喧嘩をしてもすぐに頭を撫でて抱きしめながら「ごめんね」と言ってくれた。
それが彼の我慢だと気が付かないバカな私は、ずっと甘えていた。彼の無償の愛が永遠に自分1人の物で、与えられる幸せを当たり前だと思っていた。
高校を卒業してからも彼との関係は続いていて、周りからも羨ましがられるくらい愛し合っていた。
夕暮れに海を見に行ったあの日、海の家で買ったフランクフルトを食べながら彼の運転する助手席で2人が好きな曲を聞いていた。

「1口ちょーだい」

運転しながら彼が大きく口を開けたから、持っていた割り箸で小さくちぎって彼の口に入れた。

「美味いね」
「ね、外で食べると何でも美味しく感じるの何でなんだろうね?」
「うーん、思い出効果的な?花見で食う焼きそばが世界一美味いのもそのせいでしょ」
「確かに。天才かよ」

なんて、下らない日常の一コマ
信号待ちで彼がフと、遠くを見つめた
視線の先には小さい子供を連れた夫婦がいて、愛おしそうにかき氷を食べていた
自分たちもきっとあんな風に幸せな家族になれる。そう思っていた時だった

「何かさ。幸せだよね」
「そうだね」
「今さ、明美と結婚したいって凄い感じてる」
「え?」
「まだ大学生になったばかりだし、俺、救急救命士になるって夢あるからそれまで待たせるかもしれないけど、卒業して救急救命士になったら絶対結婚しよ!」

夢みたいだった、初めて愛を感じた人だったから。こうなって欲しいと願っていた人だから。すぐにでは無いけれどいつかプロポーズをしてくれると、そう信じていた

「うん、私も結婚したいよ」

信じてたよ、ずっと…