「実は私もね、子供は諦めていたの。」

「え?」

「フフフ……ねぇ、知ってた?
私と誠、実は授かり婚だったって。」

「エェ! そうなの⁉︎」

「あれ? ミイ知らなかったんだ。
父さんが母さんを追いかけ回して、妊娠させたんだよ。それが俺。」

「おい。人聞きが悪いな。
俺は一途にだなぁ…」

「あなたのその“一途”さには感謝してるわよ。
ミイちゃん、私も同じなの。
若い時に卵巣嚢腫が出来て、手術をしたわ。
だから卵巣が片方だけしかないの。
出来ないわけじゃないけど、普通の人に比べて妊娠の確率が減ったわ。
……それもあって、もう結婚は考えないことにして、ピアノに生きよう。孫は姉と弟が作ってくれる。私は背負うものがないわって、パリで一人で生きていたの。
もちろん、誠とも別れて。
ところが、この人はそんなこと全くお構い無し。それで思いがけず優が出来て
『え? 私、お母さんになれるの? 
子供が持てるの?』
って。正直、妊娠すると思わなかったから…。
私ね、手術をした時点で、諦めてしまってたのよ。出来ないって言われたわけじゃないのにね。
奇跡が起きたと思った。
それからは軌道修正よ。もう世界はいい。私は宝物を授かったんだから、大切に育てていこうと思ったの。
ミイちゃん、だからね? 私は多分あなたの気持ちが一番わかると思うの。」