「うん。16日前にNYを出て、ずっと隔離生活をしてた。今日やっと解放されたんだ。」

「大変だったな…。
日本に帰って良かったのか? ピアノは…」

「今は音楽家には厳しい状況だよ。
それにもう、離れ離れは懲り懲りだ。」

「…まあ、その気持ちはわかる。
でも聞いたんだろう? 美衣子の体のこと。
……覚悟はあるんだな?」

「……うん。昇ちゃんごめん。
俺がそばに居ないといけなかったのに。
ありがとう。」

「いや……お前ならそう言うと思ったよ。
ありがとうはこっちのセリフだ。
優、美衣子を頼むよ。
それと、うちの両親に話すのは少し待ってほしい。今まで、親に話していなかったからな。
説明が必要だろう。
美衣子を連れて俺が実家に帰るよ。
まずは俺達で話をさせてほしい。
その後で優を呼びたいんだ。」

「わかった。タイミングを教えてくれたら伺うよ。」

「うん。だから悪いけど、坂上の両親には、それから話をしてほしい。」

「わかった。でも、昇ちゃん時間取れるの?
忙しいんじゃない?」

「いや、俺は産婦人科だから、正直それほど…。
がん検診が減ってる分、患者さんは少ないかな。だから行けるよ。」

「昇ちゃん、なるべく早く籍を入れたいんだ。」

「わかってる。婚姻届をダウンロードして準備しとけ。」

「うん。」