大学は離れたけれど、俺のそばにはやっぱり美衣子がいつも居た。

あの馬鹿げたCDデビューの話も、両親と美衣子があまりにも盛り上がるものだから引き受けたんだ。なぜ俺が王子様の格好でジャケット写真を撮らなきゃいけないんだ。音楽に全く関係ないだろう⁉︎

美衣子が応援し続けてくれたから、俺も留学してもいいかって気になったんだ。

正直、進んで行きたいとは思っていなかった。留学したら、美衣子と会えない日が続く。それも1週間や1ヶ月なんてものじゃない。年単位で会えないんだ。
生まれてからずっと一緒にいたのに。美衣子と離れるなんて考えられなかった。

でも、俺にはもう一つ背負ってるものがあった。
それは母親の夢だ。
母は、俺の出産を機に、世界で活躍するピアニストである事を諦めた。
せめて俺が小児喘息でなければ、出産後も元の演奏活動に戻れたかもしれない。

大きくなるにつれて、母親の才能の偉大さに気付いた。そして、この人は俺のために多くを諦めたんじゃないかと思うようになった。