天沢のド正論に言い返す言葉もないが、知り合いだとしても嫌いな人なら、いなくなった方が嬉しいのではないだろうか。
というか、私も天沢は知り合いだが彼が死のうが生きようが、ものすごくどうでもいい。
だが彼の純粋な瞳を見ていると、そんな汚れた考えを口にすることはできなかった。
代わりにこっちも、端麗な顔に意地悪な正論をぶつける。
「仮に天沢が悲しむとしても、私はあんた一人が悲しい思いをするから死なない、なんて考えには至らないんだけれど?」
「…本当に?」
私の掠れた醜い声に、天沢は今にも涙がこぼれそうなくらいに表情を歪めて微かに俯いた。
なんであんたがそんな顔するの?
ていうか「本当に?」て何が?
意味わかんないんだけど…。
不快感。
怒り。
イラつき。
なんだかどれもしっくりこない、謎の感情に心が支配されていく。
天沢に私の不機嫌加減が伝わったのか、彼はもう一度私の目に視線を戻して、口を開いた。
「誰からも好かれてない、必要とされていないって、それは…、それは、違うよ」
馬鹿げてる。
脳内お花畑で平和に生きてきたあんたは、なんの才能もなくて皆に避けられている人間がいることを知らないんだ。
苦しげに吐き出された声さえ美しさに満ちていて、それが更に私を苛立たせる。
「何言ってるのっ?言ったでしょ、私はっ」
──家族からも友達からも愛されない、不必要な人間だって
頭には言葉があるのに、口にしたらもう戻れないような気がして途中でやめてしまう。
意気地なし。
どうせ戻れないんだから同じなのに。
私が自分に呆れている隙に、いつの間にか天沢の歪められていた表情は跡形もなく消えていた。
感情が何一つ読み取れない真顔。
まるで繊細に作られた人形のよう。
彼は、ただただ輝かしい瞳を私に向けて、人形ではないことを証明するかのように言葉を綴った。
「本当に、悲しむのは僕だけ?」
