「高橋さんこれからランチですか? ご一緒しても……」

「すみません、今日はラーメンか牛丼で済まそうと思ってて。また今度」

「そうですかー、残念」

 眉根をひそめる彼女は隣の経理課のアイドルだが、残念ながら好みではない。

 たとえそうであっても、親しくなるような行為は避けるだろうけれど。

「昼行ってきます」

 ホワイトボードに外出の札をひっかけてエレベーターホールへ向かう。見慣れた長い廊下の向こうから人が歩いてくるように見えた。

「おつかれさ……うわっ」

 ドンッ、という強い衝撃を肩に感じる。相手は女性。

 自分より痛かったに違いないと慌てて頭を下げると大丈夫ですと笑ってそのまま歩いて行ってしまった。