『そうだったんですか…つらかったですよね…そんなこと…耐えられないですよ、普通…』


『私がその人の立場でも、おかしくなってしまうかも知れない…』


真奈が言った。


『今はあなたのところに行ってるんですね…しばらくして来なくなったんで…気にはなってたんです。実は…あなた…彼に顔が良く似てます』


『だから、良介のところに…』


『…彼は、奥さんを愛してました。もちろん奥さんも…本当に…可哀想なことをしました』


俺たちは…重い体を引きづり、お礼を言ってからそこをあとにした。


『真奈…しばらく…あの人の気持ちが治まるまで…俺、旦那さんの代わりになってあげてもいいかな?』


真奈はうなづいた。


それから…


俺は…


毎日、お弁当を受け取っている。


ただ、それだけ。


嬉しそうに笑う彼女の後ろ姿を見送るだけ…


そのうち…


彼女は…来なくなった。