「…ごめんね…でも、俺は前田君、あなたの旦那さんじゃない…」


「…嘘よ…だって、この顔…前田君だよ。同級生だった頃からいっつも笑ってて、その笑顔が大好きで…私から結婚を申し込んだら、いいよって、ずっと一緒にいよっか、って…そう言ってくれたよ…」


その人は…


もしかして…


「…大切な旦那さんなんだね。今…その人は…?」


「…」


急に黙り出した。


「大丈夫?」


顔を見ていたら、目がだんだん赤くなり、そして…


ひとすじ、涙が流れた。


「…前田君…どうして家に帰って来ないんだろう?お昼はここに来れば会えるのに、なんで家にはいないんだろう?」


気持ちが交錯して、胸の中でぐちゃぐちゃに絡まって…


この人の意識は…正常に機能していないんだ…


「…前田君…今日は帰って来て…ね」


寂しさを浮かべた表情で帰って行った彼女のこと、やっぱりどうしようもなく気になり、俺は真奈といろいろ調べて、ある日全てを知った。