ずっと目の前にいた女を幸せにしないで、俺は…


『…最後の夜だから…笑って過ごしたい。あなたを好きだった自分とも今日でお別れ。新しい人生を歩む前に、楽しい思い出を頂戴』


本当に…


俺はバカだ。


ずっと何をしてたんだ…


明美が、妻がホストに入れ上げてるって本気で信じてた。


まさか、俺に気づいて欲しくてついた嘘だったなんて…


次の朝、目が覚めたら、もう妻はいなかった。


置き手紙もなく…


なぜか、大きく落胆する自分がいる。


あんなに冷めていた妻への想いが、炎のように燃え上がって…


でも、もう…


全てが後の祭りだ…


自業自得。


俺みたいな男は、誰にも愛してもらえないんだ…


妻との思い出を頭の中から引きづり出し、かき集めようとしたのに…


俺の頭の中には…


何もなかった。


空っぽの記憶に、俺は、ただ妻に懺悔するしかなかった…


何もかも失って…


これから先は、ただ虚しい人生が自分を待っているのか…


妻は…


その後、2度と戻って来ることはなかった。