樹さんも…いない。


もし樹さんがいたら、女子達に声かけられてるはずだけど、さっきからずっといないんだ。


私は、帰り支度をしながら樹さんを待つことにした。


樹さん…


もしかして、約束忘れて帰っちゃったのかな。


『柚葉』


私の名前を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、そこには息を切らした樹さんがいた。


『樹さん』


『悪い、待たせたな』


『いいえ。大丈夫です。樹さん、息切れてます?』


『…いや、別に。下に車止めてあるから行こう』


そう言いながら、樹さんはフロアの戸締りをした。


駐車場まで降りると、そこには樹さんの車があって、私は助手席に乗せてもらった。


乗った瞬間にとってもいい匂いがした。


『何の匂いですか?いい香り』


『芳香剤だろ』


それだけ言って、樹さんは車を出した。


今日、私と樹さんが2人でいること、柊君は知らないんだ…


本当に…


柊君と私が、クリスマス・イブを一緒に過ごすことは、もう…ないんだね…