《けんしんへ》
 もちろん大人になった今でも雪乃のこと
 好きだよね?
 27さいになったらけっこんしてあげるから
 このゆびわを持って私にプロポーズするのよ。
 

自分で書いた偉そうな手紙を読みながら、
徐々にあの頃を思い出してきた。


        《雪乃へ》
 いつも守ってくれる雪乃が大好き。
 大人になったぼくは雪乃を守れているかな?
 強くなったぼくは27さいになって雪乃に
 プロポーズする。
 そして死ぬまで雪乃をあいする!
 

小学生とは思えない恥ずかしい言葉に思わず
笑いながら指輪を取り出した。

町内会のお祭りで賢心が買ってくれた指輪。
子供の私には大きすぎてはめられないけど、
何故か27歳になったらちょうどいいかもしれないねとあの時2人で話していたのだ。


「だから今、急に帰ってきて結婚の約束って…」

「賢心はずっと雪乃のそばにいたのよ」


私は勝手に賢心の為と言いながら、
強くなった賢心を信じようともせず、
自分の事ばかり考えていたのかもしれない。


右手の薬指にぴったりはまった指輪を見て
涙が止まらなくなってしまった私の心臓は……


「……ぅ、………」

バタンッ!!

「雪乃!?しっかりして、雪乃!!!」