結局、二組が練習に回ることになった。ペアを組んでいる鶴見さんが勝ちをもぎ取ってきて、椎名さん・野田さんペアとダブルスでの試合をすることになった。もう一組は島崎さんのペアで、代表者としてじゃんけんに挑んだ村本さんという人が、シングルスでの試合権をもぎ取ってきたらしい。
床の穴にネットの脚を差し込んで、設置が済むと、椎名さんは「よおーし」と、ラケットの先をこちらに向けてきた。「秋穂ちゃんよ、真剣にこいな?」
わたしも椎名さんの方へラケットの先を向けた。「当然よ。圧勝してやるわ」
なんかちょっと腕がぴきぴき痛むけど、とは言わない。昨日の鍛錬が堪えたみたいで悔しいから。
野田さんがぽんとシャトルを飛ばして、試合が始まった。すかさず鶴見さんが打ち返して、それをまた野田さんが打ち返してきて、それを鶴見さんが大きく返す。それを合図に、椎名さんが動き出す。そうすると、わたしも動き始める。
昨日の放課後から、なんだか気分がよくない。体調が悪いんじゃなくて、気分というより、機嫌がよくないというのかな。なんだか胸にもやもやが広がっていて、それをそっくり映し出しているような空にもなんだかもやもやする。ずっとずっと、雨、雨、雨って。
「しつこいっつーの」
ぴしゃりと飛んできたシャトルを、わたしは向かって右の方を狙って思い切り打った。けれど野田さんは動ける人で、椎名さんは一つも動くそぶりを見せなかった。野田さんが強く返したのを、鶴見さんが打ち返す。それを野田さんがわたしの方に飛ばしてきて、椎名さんが動きそうな場所を狙って、強く打った。
椎名さんが動いた。ラケットがシャトルを押し返して、シャトルの向きが変わって、こちらをめがけて、すごい勢いで飛んでくる。まるでスローモーションのように、はっきりとその一つ一つが目についた。
わたしから左に数メートル離れたところへシャトルが飛び込んでくるその一コマが、もしも絵になったら、“シュッ”と大きな文字が入っているだろう。
だけど、わたしだってそれなりに動ける。シャトルが“シュッ”なら、こっちは“ビュッ”。右足で、強く強く、床を蹴った。床が、シューズのゴムが、ギュッと鳴いて、わたしの体を左へ突き飛ばした。伸ばした左腕の先が、打てるよと、神経に叫んでくるのを感じて、わたしは思い切り、左腕を、左手を、前に振った。ぼん、という独特な感覚をいつもより強く感じて、視線を投げた先のシャトルは、上へ上へと駆けながら前へ前へ進み、やがて上昇を終えると、床に着地してその上を少し滑り、動きを止めた。
「アキちゃんすごーい!」と、鶴見さんが満面の笑みを向けてくる。
「なんか覚醒した?」
「しちゃったねえ」とわたしも笑い返す。
昼間ずっともやもやしていたんだから、部活でくらい、それを思いきり発散したい。
床の穴にネットの脚を差し込んで、設置が済むと、椎名さんは「よおーし」と、ラケットの先をこちらに向けてきた。「秋穂ちゃんよ、真剣にこいな?」
わたしも椎名さんの方へラケットの先を向けた。「当然よ。圧勝してやるわ」
なんかちょっと腕がぴきぴき痛むけど、とは言わない。昨日の鍛錬が堪えたみたいで悔しいから。
野田さんがぽんとシャトルを飛ばして、試合が始まった。すかさず鶴見さんが打ち返して、それをまた野田さんが打ち返してきて、それを鶴見さんが大きく返す。それを合図に、椎名さんが動き出す。そうすると、わたしも動き始める。
昨日の放課後から、なんだか気分がよくない。体調が悪いんじゃなくて、気分というより、機嫌がよくないというのかな。なんだか胸にもやもやが広がっていて、それをそっくり映し出しているような空にもなんだかもやもやする。ずっとずっと、雨、雨、雨って。
「しつこいっつーの」
ぴしゃりと飛んできたシャトルを、わたしは向かって右の方を狙って思い切り打った。けれど野田さんは動ける人で、椎名さんは一つも動くそぶりを見せなかった。野田さんが強く返したのを、鶴見さんが打ち返す。それを野田さんがわたしの方に飛ばしてきて、椎名さんが動きそうな場所を狙って、強く打った。
椎名さんが動いた。ラケットがシャトルを押し返して、シャトルの向きが変わって、こちらをめがけて、すごい勢いで飛んでくる。まるでスローモーションのように、はっきりとその一つ一つが目についた。
わたしから左に数メートル離れたところへシャトルが飛び込んでくるその一コマが、もしも絵になったら、“シュッ”と大きな文字が入っているだろう。
だけど、わたしだってそれなりに動ける。シャトルが“シュッ”なら、こっちは“ビュッ”。右足で、強く強く、床を蹴った。床が、シューズのゴムが、ギュッと鳴いて、わたしの体を左へ突き飛ばした。伸ばした左腕の先が、打てるよと、神経に叫んでくるのを感じて、わたしは思い切り、左腕を、左手を、前に振った。ぼん、という独特な感覚をいつもより強く感じて、視線を投げた先のシャトルは、上へ上へと駆けながら前へ前へ進み、やがて上昇を終えると、床に着地してその上を少し滑り、動きを止めた。
「アキちゃんすごーい!」と、鶴見さんが満面の笑みを向けてくる。
「なんか覚醒した?」
「しちゃったねえ」とわたしも笑い返す。
昼間ずっともやもやしていたんだから、部活でくらい、それを思いきり発散したい。



