「代表者集まってー」と部長の声がかかって、五人がそちらへ行った。体育館がそう広くないので、バドミントン部で一度に試合ができるのは二組まで。けれど部員は十人いて、ダブルスを二つやったとしても、一つのペアが余ってしまう。いつも、その一組は空いた場所で好きなように練習することになっていて、各ペアの代表者が集まって、じゃんけんで勝った人から試合ができるようになる。シングルスで試合をしたいときには早めに勝ち抜けないといけないので、代表者は結構な緊張に襲われる。

 「秋穂さんたち、なに希望?」部員の島崎さんが声をかけてきた。

 「まあ、試合ができればどっちでも。でも、シングルス寄りかな。島崎さんたちは?」

 「うちらもシングルス。ここ二組がシングルスで占領できたらめちゃめちゃ贅沢だよね」

 「確かに。三組が練習に回ることになるからね。でも今までで一回もなくない? 二組のシングルスって。絶対片方はダブルスやってない?」

 「そうなんだよねえ」

 「いーや、そんなこともないぞー」

 島崎さんと一緒に振り返った先には、椎名さんがいた。

 「前に前野先輩におんなじこと言ったんだけど、前野先輩たちが一年のころ、二年前に、何回かあったみたい。最後には、あたしらが入ってくるちょい前にあったらしい」

 「へえ、意外と珍しくないんだね」

 「まあ、前野先輩はそういうときほとんど練習に回されたらしいんだけど、これは誰にも言わないようにって言われたから――」

 これでね、と、椎名さんは自分の唇の前に立てた人差し指を当てて、いたずらっぽく笑った。