始業式を終えて教室に入ると、一瞬、どういう並びなのかわからないような感じで、たくさんの苗字が書かれていた。席の順、ということはわかるのだけれど、それがどうしてこうなるのか、理解するのに少し時間がかかった。
わたしは廊下側の一番前の席だった。それはわかる。けれど、その隣が和田という人らしい。後ろは稲葉という人。てっきり阿島と隣か前後になるのだと思っていたのだけれど、あいつは窓際の一番前に名前が書かれている。そしてその隣が、渡辺。どういうことだろうとしばらく考えて、そういうことかと理解した。
窓際と廊下側から、一番二番と後ろに進んでいくのだ。そして、それぞれ隣にされるのは、わたしの場合、男子の中で最後の番号の人、阿島の場合、女子で最後の番号の人、ということ。
どうしてこんな複雑な順番にしたんだろうと思ったけれど、担任が榎本先生であることを思い出して、納得した。あの人は技術の担当の先生で、「おもしろいだろ?」が口癖。なにかと変わったことをしたがる人で、その悪い癖が出てくるたびに、わたしたち生徒は戸惑う。そうか、榎本先生の仕業か。むしろ榎本先生にしては、これくらい大したことではなかった。
透くんは真ん中の列の後ろから二番目だった。
「おっ、秋穂さんじゃーん」
女の子の声がして振り返ると、小鳥遊さんだった。
「また同じクラスなんだねえ。なんか嬉しいなあ」
「本当? わたしも嬉しいよ」
「また一緒に班とか組めるといいね!」
「うん。そのときはよろしくね」
こちらこそ、と笑って、小鳥遊さんは黒板に目を向けた。なんだこりゃ、規則がわからない!と声を上げて、苦笑する。榎本先生のいたずらだよと同じように笑って言うと、あいつのせいか、と小鳥遊さんは頭を掻いた。本当によくわからないこと考える人だよねと言う彼女へ、わたしはそうだねと笑い返す。
「とりあえず、あたしはあっちか」
じゃあまたねと笑う小鳥遊さんへ、また、と返した。
小鳥遊さんは、なにやら阿島の方へ向かう。
「やあ、アジー。あたしと同じクラスだなんて、嬉しくてしょうがないんじゃないの?」と小鳥遊さんは阿島に絡む。それに対して、阿島は露骨に嫌な顔をして口を動かしている。なにを言っているのかはわからないけれど、否定的な言葉を並べているように見える。
「嫌だなあ、あたしたちラブラブでしょー?」と小鳥遊さんの声が言って、「ばかじゃねえの、黙れ、泣かすぞ」と阿島の声が返す。阿島の顔も、それはそれは嫌そう。
「なに言ってんの? アジーの方がうんと泣き虫じゃん」と、小鳥遊さんは軽くあしらっている。
ふと透くんの方を見てみると、彼もそんな二人のやり取りを見ていたらしく、そちらから視線が向けられた。
「おかしいね」と唇を動かして笑ってみると、透くんも笑った。
こんなふうに、どちらからともなく笑える魔法が、解けることのありませんように……なんて、口には出さないけれど、強く強く、願ってみたり。
透くんの笑ってる顔、大好きだよ……とは、今度言ってみようかな。今度の大好きは、きっと、笑って。
じゃあ、おれと一緒にいてよ。
おわり。
五年ぶりに会った幼なじみを、大好きになってました。
わたしは廊下側の一番前の席だった。それはわかる。けれど、その隣が和田という人らしい。後ろは稲葉という人。てっきり阿島と隣か前後になるのだと思っていたのだけれど、あいつは窓際の一番前に名前が書かれている。そしてその隣が、渡辺。どういうことだろうとしばらく考えて、そういうことかと理解した。
窓際と廊下側から、一番二番と後ろに進んでいくのだ。そして、それぞれ隣にされるのは、わたしの場合、男子の中で最後の番号の人、阿島の場合、女子で最後の番号の人、ということ。
どうしてこんな複雑な順番にしたんだろうと思ったけれど、担任が榎本先生であることを思い出して、納得した。あの人は技術の担当の先生で、「おもしろいだろ?」が口癖。なにかと変わったことをしたがる人で、その悪い癖が出てくるたびに、わたしたち生徒は戸惑う。そうか、榎本先生の仕業か。むしろ榎本先生にしては、これくらい大したことではなかった。
透くんは真ん中の列の後ろから二番目だった。
「おっ、秋穂さんじゃーん」
女の子の声がして振り返ると、小鳥遊さんだった。
「また同じクラスなんだねえ。なんか嬉しいなあ」
「本当? わたしも嬉しいよ」
「また一緒に班とか組めるといいね!」
「うん。そのときはよろしくね」
こちらこそ、と笑って、小鳥遊さんは黒板に目を向けた。なんだこりゃ、規則がわからない!と声を上げて、苦笑する。榎本先生のいたずらだよと同じように笑って言うと、あいつのせいか、と小鳥遊さんは頭を掻いた。本当によくわからないこと考える人だよねと言う彼女へ、わたしはそうだねと笑い返す。
「とりあえず、あたしはあっちか」
じゃあまたねと笑う小鳥遊さんへ、また、と返した。
小鳥遊さんは、なにやら阿島の方へ向かう。
「やあ、アジー。あたしと同じクラスだなんて、嬉しくてしょうがないんじゃないの?」と小鳥遊さんは阿島に絡む。それに対して、阿島は露骨に嫌な顔をして口を動かしている。なにを言っているのかはわからないけれど、否定的な言葉を並べているように見える。
「嫌だなあ、あたしたちラブラブでしょー?」と小鳥遊さんの声が言って、「ばかじゃねえの、黙れ、泣かすぞ」と阿島の声が返す。阿島の顔も、それはそれは嫌そう。
「なに言ってんの? アジーの方がうんと泣き虫じゃん」と、小鳥遊さんは軽くあしらっている。
ふと透くんの方を見てみると、彼もそんな二人のやり取りを見ていたらしく、そちらから視線が向けられた。
「おかしいね」と唇を動かして笑ってみると、透くんも笑った。
こんなふうに、どちらからともなく笑える魔法が、解けることのありませんように……なんて、口には出さないけれど、強く強く、願ってみたり。
透くんの笑ってる顔、大好きだよ……とは、今度言ってみようかな。今度の大好きは、きっと、笑って。
じゃあ、おれと一緒にいてよ。
おわり。
五年ぶりに会った幼なじみを、大好きになってました。



