四月に入って、一週間が過ぎた。

 空は澄み切り、雲一つない。やわらかな青色だけが広がっている。

 荷台にバッグを括り付けて、スタンドを上げる。なにも特別なことなんてない。学校へ行ったって、待っているのは退屈な始業式。けれど、こんなにも気持ちが軽いのは、なんだかわくわくしているのは、きっと、空がまぶしいくらいに笑っているから。そして、バッグの中に、新しいペンケースが入っているから。

 あれは、今日の日がまだまだ遠かった、六月半ばのこと。

 透くんは、「お誕生日おめでとう」と、ほんのりと頬を染めて言った。「これ、おれからの……」と差し出されたのは、白地にあじさいの花がたくさん描かれた包み。

 「開けていい?」とその場で開けてみると、淡い紫色の長方形の箱が出てきた。それを開けてみると、デニムの小さなポーチが入っていた。ペンケースにちょうどよさそうな。

 とっても嬉しかった。嬉しくて、思わず胸に抱いた。

 筆箱の形が自由になった小学校三年生のときからずっと使い続けていた布製のペンケースが、すっかり色味は変わり、ところどころ生地が薄くなるだけでなく、穴も空いてしまってと、ひどいありさまになっていた。それを何気なく話したのを、透くんは覚えていてくれた。

 「ありがとう! 高校生になっても、大学生になっても使う! 一生ものにする!」

 「そんな、大げさだよ」と言って透くんは笑ったけれど、わたしは本気。絶対に一生ものにする。大切に大切に使って、仕事をするようになってもきっと使って見せる。