「公園?」

 自転車を止めると、透くんが言った。

 「そう。少し散歩していこうよ」


 久しぶりに雨がやんで飛び出してきたのか、ジョギングする人、散歩する人、と、思っていたよりも人がいた。

 ふと、心にいたずらな影が差してわたしは振り返った。直後、「うわあ、おっきい虫!」と、透くんの足元を指さした。瞬間、「えっ、どこ⁉」と慌ただしくなる足を見て、わたしはおなかを抱えた。

 「そんなに笑わなくても……」と口を尖らせる透くんに、「虫嫌いなんだ?」と笑いながら返すと、「踏むわけにはいかないでしょ、生きてるんだもん」と返ってきて、自分の顔から笑みが消えるのがわかった。ああ、そういう感じですか。なんか、自分の心の汚さが今、涙として外に出そうだよ。そうかそうか、嫌いなんじゃなくて、生き物を踏むということを回避したかったのか、そうかそうか。