心臓が痛みを伴って、どきどきいっている。

 わたしは用心棒じゃなかったの? 透くんがわたしの用心棒だったの? なにそれ。今までずっと? 用心棒は透くんの方だったの? 今までの透くんの言動はすべて、用心棒としてのものだったの? でもやっぱり、それも悲しい。普通に一緒にいたかった。

 小鳥遊さんが歩いてくるのを感じて、わたしは咄嗟に、今階段を上ってきたところ、というふうに体勢を整えた。

 「おっ、秋穂さんじゃん。忘れ物?」

 「あっ、うん、そう……」

 「そっか。部活、遅れないようにね」

 「ああ、うん……」

 またねと明るく微笑んで、小鳥遊さんは階段を下りて行った。

 わたしが教室に入るころには、透くんはいなくなっていた。もう、西階段の方へ行ってしまったのだろう。部室のある部活のほとんどは、西階段を使った方が、階段を下りてから早いから。