駐輪スペースに自転車を止めて、レインコートを脱いだ。紫乃ちゃんが斜めにかけている、デニムの小さなバッグが揺れる。
「バッグ、かわいいね」
「あっ、本当? お財布ショルダーって言って、お財布なんだよ、これ自体が」
「へええ、おもしろいものがあるね」
「でしょう」と、紫乃ちゃんはかわいらしく笑う。
そして、「しっかし今年は雨ばっかりだね」と、レインコートを畳みながら言った。「こんなに雨ばっかりの年あった?」
「ないかもしれないね」
「なんでこんなに雨降るんだろう。休みの日ならまだしも、学校ある日にこんなに雨が続くと、本当に嫌になる」
「紫乃ちゃんは、雨嫌い?」
「本当に大っ嫌い、っていうほどじゃないけど、あんまり続くとね。どうせなら晴れてる方がいい」
「そっか」
「そっちは?」
「おれは……嫌いじゃないよ」
もしも今年、晴れている日がとても多かったら、おれは紫乃ちゃんに告白できなかったかもしれない。あの日、久しぶりに雨が上がったから、不思議と勇気が出せたのかもしれない。紫乃ちゃんに告白できなかったら、こんなふうに一緒にいることはできなかったに違いない。だって、今までそうだったんだから。ずっとずっと、おかしくなってしまいそうなほどの“好き”を抱えていながら、見ていることしかできなかったんだから。
「バッグ、かわいいね」
「あっ、本当? お財布ショルダーって言って、お財布なんだよ、これ自体が」
「へええ、おもしろいものがあるね」
「でしょう」と、紫乃ちゃんはかわいらしく笑う。
そして、「しっかし今年は雨ばっかりだね」と、レインコートを畳みながら言った。「こんなに雨ばっかりの年あった?」
「ないかもしれないね」
「なんでこんなに雨降るんだろう。休みの日ならまだしも、学校ある日にこんなに雨が続くと、本当に嫌になる」
「紫乃ちゃんは、雨嫌い?」
「本当に大っ嫌い、っていうほどじゃないけど、あんまり続くとね。どうせなら晴れてる方がいい」
「そっか」
「そっちは?」
「おれは……嫌いじゃないよ」
もしも今年、晴れている日がとても多かったら、おれは紫乃ちゃんに告白できなかったかもしれない。あの日、久しぶりに雨が上がったから、不思議と勇気が出せたのかもしれない。紫乃ちゃんに告白できなかったら、こんなふうに一緒にいることはできなかったに違いない。だって、今までそうだったんだから。ずっとずっと、おかしくなってしまいそうなほどの“好き”を抱えていながら、見ていることしかできなかったんだから。



