「ああ、でもさ、紫乃ちゃん?」
おれは叩かれた腕に残る痛みを感じつつ、言った。
「なに?」
「お金、あるの?」
紫乃ちゃんはぱたりと足を止めた。こちらを見上げる。
「え?」
「お金。持ってきてるの?」
紫乃ちゃんの目が、水に浮かんだ葉っぱのように落ち着かない。
「えっ……」
「あの学校、購買部風な一角はあるけど、開いてるの一回も見たことないよね」
「えっ……と……」
「いや、おれは持ってきてないってだけで、紫乃ちゃんが持ってきてるなら、全然いいんだけど」
「べっ、別になにも言ってないし。シャーペンの芯がないから本屋さん行きたいとか、一つも言ってないし」
なんか文句でも?と言う紫乃ちゃんへ、おれはううんと首を振る。
「なにも聞いてないよ。だから、まっすぐ帰ろう」
本屋さんへは、それから行けばいい。
「でも……」
「大丈夫。おれは、紫乃ちゃんといられる時間が増えて嬉しいんだ」
紫乃ちゃんはぷっと噴き出して、「本当に気持ち悪いこと言うね」と笑う。
おれが「嘘じゃないよ」と言うと、「わかったわかった。本当に変な人」と、また笑った。
おれは叩かれた腕に残る痛みを感じつつ、言った。
「なに?」
「お金、あるの?」
紫乃ちゃんはぱたりと足を止めた。こちらを見上げる。
「え?」
「お金。持ってきてるの?」
紫乃ちゃんの目が、水に浮かんだ葉っぱのように落ち着かない。
「えっ……」
「あの学校、購買部風な一角はあるけど、開いてるの一回も見たことないよね」
「えっ……と……」
「いや、おれは持ってきてないってだけで、紫乃ちゃんが持ってきてるなら、全然いいんだけど」
「べっ、別になにも言ってないし。シャーペンの芯がないから本屋さん行きたいとか、一つも言ってないし」
なんか文句でも?と言う紫乃ちゃんへ、おれはううんと首を振る。
「なにも聞いてないよ。だから、まっすぐ帰ろう」
本屋さんへは、それから行けばいい。
「でも……」
「大丈夫。おれは、紫乃ちゃんといられる時間が増えて嬉しいんだ」
紫乃ちゃんはぷっと噴き出して、「本当に気持ち悪いこと言うね」と笑う。
おれが「嘘じゃないよ」と言うと、「わかったわかった。本当に変な人」と、また笑った。



