何度目かに道を横断したとき、紫乃ちゃんが「あのさ」と声を発した。
無意識に「はいっ」と声を出していたとき、紫乃ちゃんは「なにそれ」と笑った。笑顔を見るたびに、自分が紫乃ちゃんのどんな顔を見たかったのか、紫乃ちゃんとどんなことがしたかったのかが、しっかりとした形を作り出していく。そしてそれが、どんどん心の隙間を埋めていく。
「わたし、本屋さん見たいんだけど」
「本屋さん?」
「シャーペンの芯がなくなっちゃったの。いいでしょ?」
「うん。全然。むしろ、紫乃ちゃんと一緒にいられて嬉しい」
紫乃ちゃんは途端に顔を赤くして、ばしっとおれの腕を叩いた。
「痛!」
「ばかじゃないの⁉ なんでそういうことをなんの恥ずかし気もなく言えるの⁉ 頭おかしいんじゃないの⁉」
「ええ、おかしい……?」
「おかしいよ!」
「ええ……。でも本当だよ? おれは、紫乃ちゃんといられれば、なんでもいいんだ」
「うるさいばか!」
「へへ」
もう、ばかでもいい。あほでもいい。頭がおかしくたって、常識外れだって、なんだっていい。紫乃ちゃんと一緒にいられて、紫乃ちゃんが笑ってくれるなら。おれの心は、それだけで幸せに満たされる。
無意識に「はいっ」と声を出していたとき、紫乃ちゃんは「なにそれ」と笑った。笑顔を見るたびに、自分が紫乃ちゃんのどんな顔を見たかったのか、紫乃ちゃんとどんなことがしたかったのかが、しっかりとした形を作り出していく。そしてそれが、どんどん心の隙間を埋めていく。
「わたし、本屋さん見たいんだけど」
「本屋さん?」
「シャーペンの芯がなくなっちゃったの。いいでしょ?」
「うん。全然。むしろ、紫乃ちゃんと一緒にいられて嬉しい」
紫乃ちゃんは途端に顔を赤くして、ばしっとおれの腕を叩いた。
「痛!」
「ばかじゃないの⁉ なんでそういうことをなんの恥ずかし気もなく言えるの⁉ 頭おかしいんじゃないの⁉」
「ええ、おかしい……?」
「おかしいよ!」
「ええ……。でも本当だよ? おれは、紫乃ちゃんといられれば、なんでもいいんだ」
「うるさいばか!」
「へへ」
もう、ばかでもいい。あほでもいい。頭がおかしくたって、常識外れだって、なんだっていい。紫乃ちゃんと一緒にいられて、紫乃ちゃんが笑ってくれるなら。おれの心は、それだけで幸せに満たされる。



