じゃあ、おれと一緒にいてよ。~5年ぶりに会った幼なじみが美少年になってました~

 何度目かに道を横断したとき、紫乃ちゃんが「あのさ」と声を発した。

 無意識に「はいっ」と声を出していたとき、紫乃ちゃんは「なにそれ」と笑った。笑顔を見るたびに、自分が紫乃ちゃんのどんな顔を見たかったのか、紫乃ちゃんとどんなことがしたかったのかが、しっかりとした形を作り出していく。そしてそれが、どんどん心の隙間を埋めていく。

 「わたし、本屋さん見たいんだけど」

 「本屋さん?」

 「シャーペンの芯がなくなっちゃったの。いいでしょ?」

 「うん。全然。むしろ、紫乃ちゃんと一緒にいられて嬉しい」

 紫乃ちゃんは途端に顔を赤くして、ばしっとおれの腕を叩いた。

 「痛!」

 「ばかじゃないの⁉ なんでそういうことをなんの恥ずかし気もなく言えるの⁉ 頭おかしいんじゃないの⁉」

 「ええ、おかしい……?」

 「おかしいよ!」

 「ええ……。でも本当だよ? おれは、紫乃ちゃんといられれば、なんでもいいんだ」

 「うるさいばか!」

 「へへ」

 もう、ばかでもいい。あほでもいい。頭がおかしくたって、常識外れだって、なんだっていい。紫乃ちゃんと一緒にいられて、紫乃ちゃんが笑ってくれるなら。おれの心は、それだけで幸せに満たされる。