じゃあ、おれと一緒にいてよ。~5年ぶりに会った幼なじみが美少年になってました~

 自転車置き場に入って、自分の自転車のかごへバッグを入れると、「遅い!」と女の子の声がした。相手を確認しなくても、すぐに紫乃ちゃんだとわかった。

 声のした方を見てみれば、確かに、紫乃ちゃんがいた。

 「紫乃ちゃん……!」

 「遅いよ。ずーっと待ってたんですけど」

 「ごめん。部活で……」

 「知ってる。だから部活に怒ってるの。バド部は暇なのにさ。みんな楽しそうに部活に励んじゃって」

 そう言って、紫乃ちゃんは少し唇をとがらせた。――かわいい。

 「紫乃ちゃん、部活好きなの?」

 「まあ、わたし最強だからさ」

 「へえ、すごい! 点もいっぱい取るの?」

 「だって、わたしだよ?」

 「上手なんだね」

 「もっちろんよ。もうばっしばし点取っちゃうから」

 「紫乃ちゃんの試合見てみたいなあ」

 「残念だったねえ、体育館でやる部活なら見られたのに」

 「うん、本当に残念」

 部活の時間まで柴乃ちゃんを見ていられたならどれだけ幸せだろう。自分の部活に集中できる自信はないけれど。

 「さっ。早く帰るよ? 本当に長かった。もう先に帰っちゃおうかとも思ったんだから」

 「それでも待っててくれたの?」

 おれが言うと、紫乃ちゃんは「ばか!」と声を上げた。

 「それは、それは用心棒だからってだけ!」

 わたしは一人でも全然平気なんだから、と強がるように言う姿が、とてもかわいい。けれど、それが寂しく、悲しくもある。そう、おれたちはただ、「用心棒」という呪文のような言葉で繋がれているだけで、それ以上のものはなにもない。必要がなくなれば、すぐに、さようなら。