「図工室」の文字を高々と掲げる教室。時計は部活動の時間を示している。
教室の中は、いくつもの話し声がざわざわと混ざり合っている。
「一緒にいたいんだろ?」と、間瀬くんの声がその中に混ざった。
間瀬くんはキャンバスを挟んでおれの前に座っていて、ちらちらとおれの顔を観察しては、右手を動かす。
「それなら、一緒にいりゃあいいじゃんか」
「そりゃあそうしたいよ。でも――」
間瀬くんはおれの言葉をさえぎって、「また出た」と笑う。
「『でも』じゃねえ。『だって』でもねえ。もちろん『だけど』でもねえ。お前はアイオと一緒にいたいんだろ?」
おれはなにも言わないで、一つ、頷いた。紫乃ちゃんと一緒にいたい。それ以上の本当なんてない。それでも、だけど、でも、と、言ってしまいたくなる。思ってしまう。紫乃ちゃんはきっと、おれのことが好きではないんだ。それもまた、おれが紫乃ちゃんと一緒にいたいのと、同じようなこと。それ以上の本当はないんだ。
「お前はアイオと一緒にいたいんだよな? それなら、一緒にいればいいんだよ」
「それが、紫乃ちゃんの幸せじゃなくても?」
「そーんなのは知ったことじゃねえさ。大事なのはお前が幸せで楽しいことだ」
「ええ……」
おいこら、と間瀬くんは苦笑い。
「なんだよその、『なにこいつ最低、人間のクズ、同じ空気とかまじ吸いたくねえ、消え失せろ』みたいな顔」
「そこまでは思ってないよ」とおれも笑う。
「つーか動くなよ、モデルさん」
「間瀬くんが話しかけるから」
「おれのせいかよ」
「そうだよ」
てめえ、と、間瀬くんはまた笑う。
「でも本当だ。いっちゃん大事なのは、お前が幸せなこと、楽しいことだ」
「おれにはそんなふうには思えないよ」
間瀬くんは、一つ、大きく息を吸い込んで、ふうーっと吐き出した。
教室の中は、いくつもの話し声がざわざわと混ざり合っている。
「一緒にいたいんだろ?」と、間瀬くんの声がその中に混ざった。
間瀬くんはキャンバスを挟んでおれの前に座っていて、ちらちらとおれの顔を観察しては、右手を動かす。
「それなら、一緒にいりゃあいいじゃんか」
「そりゃあそうしたいよ。でも――」
間瀬くんはおれの言葉をさえぎって、「また出た」と笑う。
「『でも』じゃねえ。『だって』でもねえ。もちろん『だけど』でもねえ。お前はアイオと一緒にいたいんだろ?」
おれはなにも言わないで、一つ、頷いた。紫乃ちゃんと一緒にいたい。それ以上の本当なんてない。それでも、だけど、でも、と、言ってしまいたくなる。思ってしまう。紫乃ちゃんはきっと、おれのことが好きではないんだ。それもまた、おれが紫乃ちゃんと一緒にいたいのと、同じようなこと。それ以上の本当はないんだ。
「お前はアイオと一緒にいたいんだよな? それなら、一緒にいればいいんだよ」
「それが、紫乃ちゃんの幸せじゃなくても?」
「そーんなのは知ったことじゃねえさ。大事なのはお前が幸せで楽しいことだ」
「ええ……」
おいこら、と間瀬くんは苦笑い。
「なんだよその、『なにこいつ最低、人間のクズ、同じ空気とかまじ吸いたくねえ、消え失せろ』みたいな顔」
「そこまでは思ってないよ」とおれも笑う。
「つーか動くなよ、モデルさん」
「間瀬くんが話しかけるから」
「おれのせいかよ」
「そうだよ」
てめえ、と、間瀬くんはまた笑う。
「でも本当だ。いっちゃん大事なのは、お前が幸せなこと、楽しいことだ」
「おれにはそんなふうには思えないよ」
間瀬くんは、一つ、大きく息を吸い込んで、ふうーっと吐き出した。



