じゃあ、おれと一緒にいてよ。~5年ぶりに会った幼なじみが美少年になってました~

 「図工室」の文字を高々と掲げる教室。時計は部活動の時間を示している。

 教室の中は、いくつもの話し声がざわざわと混ざり合っている。

 「一緒にいたいんだろ?」と、間瀬くんの声がその中に混ざった。

 間瀬くんはキャンバスを挟んでおれの前に座っていて、ちらちらとおれの顔を観察しては、右手を動かす。

 「それなら、一緒にいりゃあいいじゃんか」

 「そりゃあそうしたいよ。でも――」

 間瀬くんはおれの言葉をさえぎって、「また出た」と笑う。

 「『でも』じゃねえ。『だって』でもねえ。もちろん『だけど』でもねえ。お前はアイオと一緒にいたいんだろ?」

 おれはなにも言わないで、一つ、頷いた。紫乃ちゃんと一緒にいたい。それ以上の本当なんてない。それでも、だけど、でも、と、言ってしまいたくなる。思ってしまう。紫乃ちゃんはきっと、おれのことが好きではないんだ。それもまた、おれが紫乃ちゃんと一緒にいたいのと、同じようなこと。それ以上の本当はないんだ。

 「お前はアイオと一緒にいたいんだよな? それなら、一緒にいればいいんだよ」

 「それが、紫乃ちゃんの幸せじゃなくても?」

 「そーんなのは知ったことじゃねえさ。大事なのはお前が幸せで楽しいことだ」

 「ええ……」

 おいこら、と間瀬くんは苦笑い。

 「なんだよその、『なにこいつ最低、人間のクズ、同じ空気とかまじ吸いたくねえ、消え失せろ』みたいな顔」

 「そこまでは思ってないよ」とおれも笑う。

 「つーか動くなよ、モデルさん」

 「間瀬くんが話しかけるから」

 「おれのせいかよ」

 「そうだよ」

 てめえ、と、間瀬くんはまた笑う。

 「でも本当だ。いっちゃん大事なのは、お前が幸せなこと、楽しいことだ」

 「おれにはそんなふうには思えないよ」

 間瀬くんは、一つ、大きく息を吸い込んで、ふうーっと吐き出した。