心に空いた小さな穴に
 醜い感情が流れ込んできて。

 塞ぎたくても、穴はどんどん広がって。

 綺月君に反抗的な感情しか、湧き出てこない。




 私は椅子から立ち上がると、
 無言で机の上の本を片付け始めた。



「俺に、言いたいことがあるんじゃねぇの?」


「……」


「心美の黙り込む癖、ほんと……」



 怒鳴り声を、途中で飲み込んだ綺月君に
 聞きたい。


 今の続きは?

 『本当に、大嫌い』って、言おうとした?




 でも、そんなことは聞けなくて。


 モヤモヤが隠し切れない私から出た言葉は、
 綺月君を怒らすほどイヤミっぽい。