怒りモードの綺月君を前にすると、
いつも私は、謝ることにしている。
嫌われたくなくて
『綺月君の言うとおりにするね』って、
微笑むようにしている。
でも今回は。
『男の子を無視するね』って
どうしても言えない……
椅子に座ったまま、言葉に詰まり、
唇の震えが止まらない私。
そんな私の前に立つ綺月君は、
優しさをまとったような笑顔で
私を見つだした。
「心美には、
俺だけがいればいいよな?」
優しく奏でる声と共に、
綺月君の手の平が伸びてきて
ふんわりと私の頬を包む。
見上げると
大好きな瞳が優しく揺れていて。
私を想ってくれているのが伝わるほど、
陽だまりみたいな微笑みを
向けてくれていて。
怒っていた時とのギャップに
心が持って行かれそうになる。



