俺は俺で

 ゾルックのセンターとして、
 女子を無視するわけにもいかず。


 休み時間や昼休みは、
 ゾルックファンに囲まれる毎日。



「綺月君、今度の土曜日のライブ見に行くね」


「サンキュー」

 笑顔は、一応キープ。



「理事長がライブで、手品を披露するんでしょ?
 綺月君もやるの?」


「俺はしねぇよ。センスゼロだし」


「綺月君の手品、見たい~」


「お前らさ、
 失敗する俺を見て、笑いたいだけだろ?」

 いじりも飛ばす。



 でも。

 笑ってる俺と、心の闇との落差がしんどくて。

 作り笑いの度に、元気が削られていく感じ。

 

 こんなところで笑顔作るんだったら、
 心美に笑いかけたいのに……



 誰か俺を、
 ピンクのハートが飛び交う女子集団から
 逃がしてくれないかな?




 机に頬杖をつき
 諦めモードでコクコク頷く俺の前に、
 

「綺月君!」

 救世主が現れた。




 って……天音じゃん。

 喜んで損した。




 だって。

 女子のキャーキャー声の飛び跳ねが、
 さらに増しただけだし。