数秒遅れで流れ込んできた幸福感が
 大粒の涙に姿を変え、頬を伝う。



 拭っても、拭っても。
 ひっきりなしに溢れてきて、止められない。



「雪那、泣くところじゃないでしょ。
 飛び跳ねて喜んでくれなきゃ」


 千柳様の優しい声が
 さらに私の涙腺を刺激して、
 余計に涙が溢れ出す。




 涙顔のまま。

 私は思いっきり、口角を上げた。



「卵焼き……食べたいです……」


「雪那。今、それを言うところ??」


「だって……
 千柳様からの愛が……
 たっぷり入っていると思うから……」


「本当は、もっともっと
 詰め込みたかったけどね」


 アハハと笑いながら、
 千柳様は優しく、涙を拭ってくれた。





 この後、千柳様と私は。


 キッチンのドアにカギをかけて。


 誰にも邪魔されないように、
 二人だけで、卵焼きをほお張ったんだ。



 心美ちゃん、綺月君、天音君。
 卵焼きを全部食べちゃって、ごめんね。



☆ダメダメ御曹司 初めての料理 おしまい☆