千柳様との握手会。
 
 ついに私の番が来た。



 アイドル姿の千柳様を
 こんな近くで拝めるなんて、感激だよ。


 優雅に微笑む千柳様が、カッコよすぎて、
 私の魂が、天に連れ去られそうです。




 必死にドキドキを隠して
 千柳様の前に進む。




 『ライブを見に来てくれて、ありがとう』

 私の手を握って微笑んでくれた、千柳様。



 声、甘すぎ。

 笑顔も極甘。


 さらにさらに。
 千柳様からの蜜甘ウインク攻撃。

 

 完全に……

 私のハートが、ノックアウトです……


 

 な……何か言わなくちゃ。

 千柳様が喜んでくれるような、何かを!




 頭の中で、必死に考えているのに。

 千柳様の魅力のシャワーを浴びせられ。

 中毒性の強さに、
 目が回ってしまうほどで。



 心臓も。脳も。
 グルグルかき回され。

 笑顔も作れず。
 可愛い声も作れず。



『ファンです』


 真顔の私の口から飛び出したのは、
 甘さゼロ。

 いやいや、甘さ氷点下の
 南極の氷みたいに冷たい声だった。
 
 

 そして、
 千柳様から見えない建物の陰に
 逃げてきてしまいました。