キッチンのドアを開け
リビングを見回してみた。
千柳様は
大型テレビの前に置かれた大きなソファに
膝を抱えて、ちょこんと座っている。
逃げられないように。
気配を消して、千柳様に近づいた。
「あの……」
ビクリ。
肩が飛び跳ね
座ったまま、私に背中を向けた千柳様。
暗い空気に引きずられたらダメ。
私は、千柳様の心を癒す
お月様になりたいんだから!!
「朝ごはんを作るために、
千柳様は早起きをしてくれたのですか?」
「おいしい朝ごはんを作って……
雪那が喜んでくれたらいいなって
思ったけど……
ほとんど天音が作ったから……」
「千柳様も、
お手伝いをされたのですよね?」
「卵をかき混ぜただけ……
天音に『せっちゃんに甘えるな!』って
怒られたし……」



