待って。待って。

 今の、本当に雪那だよね?



 数時間前に
「大好きです」って微笑んでくれて。

 俺の彼女になってくれた
 雪那本人だよね?




 まさか俺……

 ライブ中に、
 雪那に嫌われるようなことしちゃった?
 



 雪那に包まれた俺の右手が、
 どんどん冷たくなって。

 不安が冷汗に変わり
 首筋を滑り落ちていく。




「千柳、そろそろステージに上がって。
 はける前の挨拶をするから」


 マネージャーの言葉に

 剥がれ落ちていた蜜甘スマイルを
 なんとか顔に貼り付け、
 ステージに戻ったけれど……


 俺たちを見つめる、
 たくさんの熱のこもった瞳の中に。

 大好きな瞳を
 見つけることはできなかった。