「ノロケ話をしたいだけなら、
 今すぐ自分の部屋に帰って。
 僕一人で作るから!」


「えっ…………」



 やっと僕の声が届いたと安心したら、
 悲しそうに眉をひそめた千柳さん。




「天音、ひどいよ~」


「朝ごはんを作る気ゼロなら、
 キッチンから出ていって!」


「天音……
 俺を見捨てないでよぉ……」


 瞳をウルウルさせ
 僕の腕に抱きついてきた。




 きっと、せっちゃんは

 高級スーツをビシッと着こなす
 大人カッコいい千柳さんと

 甘えモードの千柳さんのギャップに
 やられてるんだろうな。



 まぁ、わからなくもない。


 僕の腕にしがみつく千柳さんは

 情けなくて。幼稚で。
 ちょっと可愛いから。