目が回りそうなほどの、緊張感に襲われ

 テントの真ん中で、
 立ちつくすことしかできない私。



 その時。


「失礼しま~す」


 陽気な声と共に

 瞳が見えないほどの真っ黒サングラスに
 マスク姿の男性が、テントに入ってきた。



 あのスカジャンって……

 初デートの記念に、
 お揃いで買ってもらった……



「雪那、お疲れ様~」


「せっ…千柳さま!?」



「当たり~」と、マスクを外し、
 サングラスを胸元に引っ掛けた千柳様。



「なっ……なんで、
 ここにいらっしゃるのですか?」


 今日は、
 来週のゾルックライブの打ち合わせに行くって
 言っていらしたのに……



「大好きな雪那の初ステージ、
 見たくなっちゃったから」


 千柳様は、蜜甘ウインクをパチリ。

 私に飛ばしてきたけれど。



 わっ…まっ…ひゃっ…

 どうしよう……
 どうしよう……


 千柳様に見られている中、
 ステージに上がったら。

 緊張が倍増して。

 マイクを持ったまま、
 オロオロ固まっちゃいそうなのに~