「わかったよ……
 僕も一緒に、朝ごはんを作るよ……」


「天音なら、
 そう言ってくれると思ったぁ」



 満面の笑みで僕の頭を撫でる
 千柳さんの手を振り払い

 僕はしょうがなく
 ベッドから抜け出した。




「それで、何を作るわけ?」 


「カラフルで。おいしそうで。
 雪那が「千柳様、すごい!」って
 飛び跳ねてくれるものがいいな」



「……で?」


「え?」


「だから、何を作るの?」


「雪那の笑顔が見れるもの」



 パジャマを脱ごうと
 ボタンに手をかけたのに。

 千柳さんの言葉に呆れ
 僕は固まってしまった。



 イメージ、ざっくり過ぎ。
 
 作りたい料理、無いんかい!



 エセ関西弁が
 僕の脳内にこだましたけれど……


 相手は、浮世離れした蜜甘御曹司。

 何を言っても
 優雅な笑みで流されるだけ。




「千柳さん、僕の邪魔だけはしないでよ」



 迷惑声を千柳さんにぼやき。

 僕は、千柳さんの初めての料理の、
 面倒を見る覚悟を決めた。




 綺月君と料理をした方が……
 100万倍マシだよ……