「不安だから、嫉妬して。束縛して。怒鳴って。
また嫉妬しての繰り返し。
綺月君は、負のスパイラル地獄の
住人なんだろうけど……」
「俺が地獄に住むわけないだろ!」
「例えでしょ!
綺月君は、頭が固すぎなんだから」
天音は悪そうに笑いながら、
俺の髪をグシャグシャに。
俺は「うぜー」と、
頭をぶんぶん振って、天音の手を振り払う。
「僕はね、心美ちゃんが
自分の気持ちを伝えられる人にならない限り、
この二人はダメになるだろうなって
心配してたんだよ」
「それで俺を、
心美がいる資料室に誘導したわけ?」
「誘導って酷いじゃん。
学校で二人きりになれるチャンスを
作ってあげたのに」
「僕って、優しい天使でしょ?」と、
舌を出した天音に。
「『地獄の熱湯がまの中に頭を突っ込んで、
鬼に目ん玉くり抜いてもらって!』なんて
残酷なことを言う天使が、いるかよ」
と、呆れ声を返す。



