光の世界に出た僕。


 僕の前には
 目を細めたくなるほど眩しい、
 千柳さんのギラギラ笑顔が。




「天音、俺に協力してくれるよね?」


「……何を?」


「雪那が起きてくる前に、
 俺、朝ごはんを作りたいの」


「勝手に作ればいいでしょ」


「俺が、料理なんかできると思う?」



 ……
 ……

 
 できないでしょうね。


 子供の頃から、せっちゃんに甘やかされて。

 家事経験ゼロの千柳さんには……




 目玉焼きが焼けないどころか、
 卵すら割れないんじゃ。


 塩と砂糖の区別がつくとも、思えないし。


 揚げ物でもするの?ってくらい、
 鍋に油を注ぎ。

 火事になって。

 この屋敷が燃えて……




 エプロン姿の千柳さんを
 想像すればするほど

 僕の中の危険信号が、強烈に点滅する。



 ――千柳さん一人で
   料理を作らせるのは、危険。


 ――この屋敷の危機。

 ――僕たちの生命の危機。