「薬……飲んでない……」



 熱で脳がやられ

 今にも閉じてしまいそうなまぶたを
 少しだけ開け続ける。


 だって。


 まぶたを閉じちゃったら

 夢の中の綺月君が、
 消えてしまいそうだから。



「薬持ってくるから。ちょっと待ってて」



 額に感じていた冷たさが消え。

 綺月君が
 ベッドから立ち上がった瞬間。


「……行かないで」


 綺月君に届かないくらい弱々しい声が、
 こぼれたけれど。



 綺月君の腕を掴もうと伸ばした
 私の手は。

 何も触れることなく、
 力尽きるようにベッドに沈み込んだ。