「僕が心美ちゃんに、
 ライブを見に来てってお願いしたの」


「天音、なんで?」


「心美ちゃんも最後くらい、
 元カレ束縛男のステージを
 見たいかなって思って」



 見たいわけないだろ!

 今だって、すっげー暗い顔で
 心美は客席でうつむいているのに。



「心美ちゃんをがっかりさせないように、
 カッコいい綺月君でステージに立ってね」




 天音はエンジェルスマイルを飛ばし、
 俺の背中を叩いて、
 楽屋に消えていったけれど。



 のぞき穴から見える心美は、
 泣きそうなくらい顔を歪めていて。


 俺はどんな顔でステージに立てばいいのか
 わからなくなってしまった。