「俺がムリなんだって……
 心美がいない人生なんて……」




 情けなく背中を丸める俺。

 弱っている俺に、天音は容赦しない。



「僕はもう、知~らない!」


 天音は、わざと俺の心の傷をえぐるように
 能天気声をスキップさせた。




「綺月君、客席を見て」


 怖いくらいにんまり笑顔の天音に促され、
 のぞき穴からお客さんを見回す。


 その中に
 雪那に付き添われるように立つ、
 心美の姿が。