「別に、男が心美に無視されようが、
 どうってことないだろ?」


「綺月君、それは違う。
 心の痛みに、性別なんて関係ないの」


 
 俺は心美以外の女に無視されても、
 なんとも思わねぇし。



「心美ちゃんが、小学校の頃から
 いじめられてたって話、
 綺月君も聞いたでしょ?」


 辛かったよって
 涙をこぼして、俺に話してくれたけどさ。


「無視も立派ないじめなの。
『あなたが嫌い』って、全拒否された感じ。
 綺月君にわかる?」



 天音は「綺月君には、この辛さが
 一生わからないかもね」と付け加え、
 苦しそうな顔のまま、言葉を続けた。



「心美ちゃんはね、
 無視される辛さにずっと耐えてきた子だから、
 同じことを、誰にもしたくないって思うんだよ」