「多分、斎藤君と優梨愛ちゃんは、
 付き合ってるよ」


「なんで天音に、そんなことがわかるんだよ」


「綺月君は、心美ちゃんしか見てないから
 気づけないの!」


「それなら心美も、
 斎藤の彼女は優梨愛って言えばいいだけじゃん。
 なんか、後ろめたいみたいに俺に隠してさ」


「内緒にしてって、
 二人にお願いされてるんだと思うよ。
 心美ちゃん、
 友達との約束は大事にする優しい子だから」


「でも、斎藤のことを無視したくないって」



 それって。

 俺よりも、斎藤に嫌われたくないからだよな?




「斎藤君限定じゃなくて、
 誰のことも無視したくないってことでしょ」


「だから、それが……」


「綺月君は、ずっと人気者で生きてきたから、
 無視される人の気持ちが
 わからないんだろうね」



 納得するかのように頷づいた天音は

「無視ってね、本当にきついんだよ」と、
 辛い過去を思い出したかのように、
 顔を歪めている。