「心美さ、DVD、全巻持って行けよ。
 俺さ、オマエとヴァンのアニメを見てても、
 面白さ全然わかんねぇし」



 DVDを詰め込んだ紙袋を、
 綺月君は私の前に乱暴に置き

 また部屋の奥に戻っていった。




 パッケージに描かれた、吸血鬼のヴァン様。
 
 見つめるだけで、
 ナイフで削られたように心が痛む。




 ヴァン様のアニメイベントがなかったら、

 私と綺月君は
 出会ってさえいなかったんだ。


  

 綺月君は、後悔しているの?


 あの時、英語がしゃべれない私を
 助けなかったら。

 十字架ネックレスを、
 私の首にかけなかったら。


 私たちが出会うことも、付き合うことも、
 絶対に無かったって。