「今からレッスン。
車で、氷牙を待たせてるから……」
「そっか。じゃあ、夜は?
レッスンで疲れてたら、明日の朝でも……」
「俺に聞いて欲しいことって……
斎藤のこと……?」
斎藤君に関係あると言えば、関係あるよね?
男子と話さないでって言われたことだから。
不機嫌そうに瞳を揺らした綺月君に、
恐る恐る頷いてみたけれど。
その瞬間。
綺月君の表情が一変。
眼に怒りの炎を燃やし、
私の腕を引っ張った。
引きずられるように、
壁際に連れてこられ。
壁に背中がぶつかったまま、
綺月君を見上げてみたけれど。
こんなに怒っている綺月君を見るのは
初めてで、
恐怖で声が喉を通らない。
私を殴るように飛んできた
綺月君の手の平は、
私の顔の真横の壁に突き刺さり。
壁の振動が私の背中に伝わって、
余計に体が震えだしてしまった。



