俺の名前はジュード・ヴァージル。年齢は八歳。筆頭公爵家の嫡男である。
 将来有望なヴァージル公爵家の一人息子として生を受けた。だが生まれながら病弱だったせいで、六歳までは領地で長いこと闘病生活を送っていた。同年代と外で遊ぶこともなかったため、体の線も年下の女の子よりも細い。
 幸いなことに医師の尽力もあって、長年患っていた病気はすでに完治している。
 完治後も一年間は基礎体力をつけるため、領地では主に体力トレーニングに励んだ。ある程度、体力がつくと王都でも指折りという家庭教師の指導のもと、勉学や貴族の社交マナーを徹底的に詰め込まれた。
 そして王都にやってきた俺は、格差社会を目の当たりにした。
 貴族の子どもは、父親の爵位で順位が決まる。一般教養として知ってはいたが、想像よりもずっと身分の差は大きかった。仲良くなりたいと思った子でも、敵対する派閥の子どもなら、その望みは叶わない。自分の友人でさえ親の選別のもとに決められる。
 自然と同じ派閥の子どもが身を寄せ合い、身分に応じたグループの輪ができあがっていた。
 厳しいマナー教育を耐え抜いてきた上位貴族と下級貴族では、身に纏う服や、連れている使用人の質もまるで違う。子どもを見るだけで、その親が潤沢な資産を持っているかは容易に判断がついた。

 そして、俺の周囲には常に人が集まっていた。