逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「その方法だと婚約できるのはいつになるか、わからないぞ……? すでに俺は二度も逃げられている。ならば婚約という形で関係を明確にすれば……」

 両手で必死に説明するが、キールは首を横に振るばかりだった。
 無言で見つめると、仕方がないといった様子で答えが返ってくる。

「婚約していなくても、好かれる方法はいくらでもあります。今、無理に婚約すれば彼女の心証は最悪なものになるでしょう。そのまま形だけの夫婦になっても構わないのなら、無理にお止めはしませんが」
「…………それは困る。俺はエステリーゼに好かれたい」

 もしヴァージル公爵家から圧力をかけ、無理やり婚約の話を通した場合、彼女の心は手に入らない。いくら俺でも、そのぐらいの判別はできる。だからそれは奥の手だ。
 キールは不可解そうな顔で、思案するように顎に手をやった。

「何が原因かはわかりませんが、彼女の中には逃げるだけの理由があるのでしょう。でしたら、ゆっくりと彼女の信頼を勝ち取り、徐々に好意を持っていただくしかありません」
「ゆっくりと……つまり何年かかるかわからない、ということか?」
「ええ、そうです。ジュード様、そのお覚悟はありますか?」
「…………」

 キールが言いたいことはわかる。