逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

「さようでございます。女性に会う際は手ぶらではいけません。花でもお菓子でも、なんでもいいのです。エステリーゼ様が喜ぶものをご自身で考えて用意なさってください」

 キールは簡単に言うが、俺は女性の好みがまったくわからない。
 今まで興味がなかったのだから当然だ。それに俺のセンスと彼女の好みが違う場合、取り返しのつかない状況になるのではないだろうか。

「本当に俺が選ぶのか? そういったことはキールのほうが適任だろう?」

 一度ならず二度までも、俺は失言したらしい。
 キールが満面の笑みを向けた。同じ笑顔でも、俺にはわかる。これはブラックの笑顔だ。自然と背筋がピンと伸びる。怒り心頭か心底呆れ果てたかはわからないが、なんにせよ彼の機嫌を損ねたことだけは間違いようもなかった。

「…………確認しますが、本当にエステリーゼ様に好かれたいのですよね?」
「も、もちろんだ」
「手間を惜しんでは望む結果は得られませんよ。手抜きはすぐにバレるものです。ちゃんと相手のことを考えて悩んだ贈り物なら、忌避されることはないでしょう」
「そ、そうか……? 俺からいきなりプレゼントされても、逆に怖がらせるだけの気もするが」

 知人でもないのに、急に異性からプレゼントをされても困惑するだけだろう。
 俺の指摘にキールは黙考し、数秒後、答えが出た。