逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る

 彼の前で情けない自分を出すのは気が引けたが、これはキールにしか相談できない案件だ。ならば腹をくくろう。狭小な男のプライドなんて捨ててしまえ。
 キールは俺の深刻な顔つきを見て、生真面目な顔で言う。

「いかがなさいましたか?」
「エステリーゼとの仲を深める方法を教えてくれ。好かれていない女性に心を開いてもらうには、まず何をしたらいい?」

 俺は極力、他人の力を借りたくないタイプだ。逆ならばいいが、自分が貸しを作るのはあまりしたくない。だからこそ、こうして誰かの知恵を借りることは、普段ならば絶対にしなかったはずだ。しかしながら今回は、エステリーゼとの婚約がかかっている。
 俺にとって一生を左右する重要案件だ。
 この切実な思いが伝わったのだろう。キールは真剣な表情のまま口を開いた。

「そうですね……。ジュード様の場合、エステリーゼ様には何度も逃げられていますから、すぐには心を開いてくださらないでしょう。それに、ジュード様は異性を褒めることが特に苦手でおいでです。ならば、誠意を尽くして謝罪することが一番ではないでしょうか」
「俺が頭を下げるのか? 逆ではなく?」

 とっさに口を挟んでしまっただけなのに、キールの視線は冷ややかだった。